動物実験によって、電極(電気刺激)を視床下部のある一定の箇所にあてると、その動物は激しい恐怖または怒りを示すことが明らかになっています。
つい最近の話ですが、脳の青雄と呼ばれる箇所について一連の実験が行われました。青雄は視床下部よりずっと小さいものですが、とても重要な役割をもっています。視床下部を含めて脳の重要な組織はほばすべて、この部分となんらかの形で関係しているからです。
エール大学のユージン・レドモンドはサルの脳に電極をつなぎ、青雄の部分に電気ショックを与えました。するとサルは人間のパニック発作に相当する症状を示したのです。
ですから、最初に緊急警報ボタンを押すのは青雄だということは大いにありうることです。視床下部ではなく青雄で、あるいは視床下部に加えて青雄で神経が信号を発することによって、パニック発作が引き起こされるのでしょう。
脳の活動の測定に用いる脳波計は、脳の外側の層から発信される信号をとらえることはできますが、脳内のもっと奥深くの、内側の部分からの信号をとらえるほどの感度はありません。
第一に、そうした信号は弱く、おまけに何層もの組織や骨を通り抜けて、ようやく測定可能な外側までたどり着くのです。
そういうわけで、青雄や視床下部で電気がわるさをするという直接の証拠はありません。それでも、以前から動物実験をとおして推論されているように、たしかにこれが人間の脳内で起こっていることなのです。